ナイジェリア・ガーナ渡航

 

2013年8月24日から9月17日にかけて、中山特任助教、バラージュ(D2)、ネスタ(D1)の3人で

ナイジェリアおよびガーナに渡航し、サンプリングおよび「5th International Toxicology Symposium in Africa」での研究発表を行いました。

 

詳細は以下に報告書をアップしました。

 

【渡航先・日程】

ナイジェリア(ベニン大学、2013年8月24日から9月5日)

ガーナ(クワメ・エンクルマ科学技術大学、2013年9月5日から9月17日)

【渡航目的】

本渡航では、ナイジェリアのベニン大学においてはProf. Lawrence Ezemonye (Professor of Ecotoxicology & Environmental Forensics)らと、ガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学では、講師であるDr. Osei Akoto (Chemistry Department)およびDr. Godfred Darko (Chemistry Department)らとディスカッションを行う予定である。さらに、ナイジェリアでは環境の汚染レベルのスクリーニング調査のために家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ)や野生ラットのサンプリングを行う。一方、ガーナではアフリカの環境汚染に関する国際シンポジウム「5th International Toxicology Symposium in Africa」に参加する。

【ナイジェリア】

本渡航に先立ち2012年の10月にベニン大学内に設置されているNational Centre for Energy and Environment のDirectorであるLawrence I.N. Ezemonye教授と話し合いを行った。ナイジェリアでは、2010年に北部ザムファラ州において400人以上の子供が死亡するという深刻な鉛中毒事件が発生している。また、南部の石油産出地域における環境汚染も問題となっており、家畜やヒトに対する調査を早急に行う必要があるということが分かった。

上記の点も踏まえつつ、本渡航では、環境の汚染レベルの初期スクリーニング調査のために家畜(ウシ、ヤギ、ニワトリ)や野生ラットのサンプリングをベニン大学のあるベニンシティ内で行った。ベニンシティは人口約120万人を有するナイジェリア南部のエド州都である。限られた期間で効率的にサンプル採材を行うために、Ezemonye教授の研究グループと初日に綿密なミーティングを行った。約1週間のサンプリング期間で、ニワトリ(25羽)の血液、肝臓、腎臓、脾臓、肺、心臓、筋肉、筋胃、筋胃内容物、卵、骨、羽、24頭分のヤギの臓器(筋肉、肝臓、腎臓)、5頭分のウシの臓器(筋肉、肝臓、腎臓)を採材した。また、これらの動物が飼育されている地域の土壌もバックグラウンドデータ用に採材した。さらに、39匹の野生ラットから、血液、肝臓、腎臓、脾臓、肺、心臓、筋肉、脳、骨を採材した。以上のように、カウンターパートとの連携を取りつつ、短期間において事前の想定以上のサンプルを採材することができ、今後もナイジェリアでの調査を継続していくことが可能ではないかと思われた。今回は、上記のサンプルを日本に輸入することはできなかったが、今後、動物検疫に必要な輸入手続きを完了させ、環境汚染物質の化学分析や、化学物質による野生ラットや家畜への影響評価に関する解析を行っていく予定である。

【ガーナ】

ガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学では、講師であるDr. Osei Akoto (Chemistry Department)およびDr. Godfred Darko (Chemistry Department)らとディスカッションを行った。特に、これまでの研究で明らかになったクマシ市の多環芳香族(PAHs)汚染に関して、ヒトに対しての影響評価を行うことを目的に、尿サンプルを採材していくこととした。現在、サンプル採材に際して必要となる研究倫理委員会の承認を得るべく、研究計画書を作成している。研究倫理委員会の承認が得られ次第、現地に渡航しサンプリングを行う予定である。サンプルはPAHsおよびその水酸化代謝物の測定に用いる予定である。

また、2013年9月12-13日にクワメ・エンクルマ科学技術大学理学部で開催された「5th International Toxicology Symposium in Africa」の開催運営委員として、開催に必要な事前準備や当日の運営を行うとともに、自身の研究内容について口頭発表を行った。このシンポジウムでは、特にアフリカ地域の環境毒性学・環境化学に関するトピックを議論する目的で開始されたものであり、今年度で5回目となっている。今年は、ガーナ・ザンビア・南アフリカ・エジプト・ナイジェリア・ケニア・ウガンダ・カメルーン・スーダン・エチオピア・コンゴおよび日本から参加し、2日間で口頭発表16演題、ポスター発表34演題の発表が行われた。クワメ・エンクルマ科学技術大学の運営委員による事前の周知により、現地の学生や教員が60人ほど参加していたのは、アフリカ諸国における環境汚染の現状に関しての情報共有や環境毒性学に関する教育という観点からも非常に有意義だったと考える。

また、「Pb and Cd pollution in soil, chicken and cattle from a lead-zinc mine in Kabwe, Zambia」というタイトルで口頭発表を行った。これまでの研究において、ザンビアのカブエ鉱床地域における土壌金属汚染が、鉱床周囲の地域にまで広がっている可能性を示し、さらにザンビアにおいて重要な食料資源であるニワトリやウシの可食部においても基準値を超える非常に高濃度の鉛やカドミウムなどの毒性金属が蓄積していることを明らかにしてきた。本シンポジウムでは、これらの研究結果を取り纏めて発表した。参加者からは多くの質問を頂き、環境毒性に関する様々なディスカッションを行うことができた。