タイのKasetsart Universityで共同研究のディスカッションを行いました。
タイのKasetsart Universityで共同研究のディスカッションを行いました。
報告書を以下に記載します。
出張報告(タイ)
環境獣医科学講座 助教
水川葉月
出張期間:2013年10月16日~19日
出張先:Kasetsart University, Thailand
渡航者:池中良徳准教授、中山翔太助教、水川葉月
出張目的:
最近の研究により、ペットのネコは難燃剤として使用されているポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)を蓄積しており、増加する甲状腺機能亢進症とPBDEs代謝物との関連性が強く疑われている。PBDEsの曝露経路はハウスダストの体毛付着と毛づくろい(グルーミング)からの取り込みに加え、キャットフードなど餌による高濃度曝露が原因と考えられている。そこで、ペットのネコ血清を用いて、有機ハロゲン化合物とその代謝物の汚染実態の解明と毒性影響評価および疾病(とくに甲状腺機能障害)との関連を明らかにすることを目的に、ネコの血清採取に関する打合せをタイのKasetsart Universityで行った。
Kasetsart Universityの獣医学部は2つのキャンパスに設置されており、4つの附属動物病院(Veterinary Hospital Bang Khen、Veterinary Hospital Hua Hin、Veterinary Hospital Kamphaeng Saen、Veterinary Hospital Nong Pho)を併設している。Bang Khen動物病院では1日約300患者が訪れる。そのうち、約三分の一の患畜がネコであるため、多くの血清試料の採取が期待できる。今回、共同研究者であるProf. Amnart, Dr. Aksorn, Mr. Andyらの協力の下、これら4つの動物病院を訪れ、血清採取に関する依頼と採取方法等に関する打合せを行った。
バンコク市内にあるBang Khen病院は、2012年に増改築されたばかりで、イヌ、ネコ、エキゾチックアニマルなど動物ごとに診療場所が異なる。また、外科や内科、放射線科の他に、眼科や皮膚科、神経外科といった専門分野の診療の実施や、最新の医療機器(MRIやCT検査、リニアック等)も導入されており、高度な医療を受けることができる病院体制であった。都会にある大学病院であるため、毎日多くの患者が訪れている。病院の規模や来院者数を見て、タイにおけるペットブーム現象を目の当たりにし、ペットにおける化学物質汚染実態の解明が急務であると感じた。
バンコクから車で数時間走ると、広大な敷地をもつKamphaeng Saenキャンパスがあり、周りには田園風景が広がる。そのようなキャンパス内にあるKamphaeng Saen動物病院では愛玩動物のみならず、野生動物の患畜も多く、多くの自然が残るタイならではと感じた。特に、キャンパス内にゾウやトラ(赤ちゃん)が運ばれてくることには驚いた。
このような病院施設を持つ大学で、愛玩動物、家畜、野生動物を対象に獣医学を学べる環境を拝見し、今後は様々な共同研究の実施が期待できると感じた。